ある夜、香水のようなにおいがどこからともなく漂ってくる。よほどたっぷりと香水をつけた人が通ったのかと思っていた。が、ずいぶん長く強く続くので、香りのもとをたどってみたら、お向かいの「酒処 咲笑」の入り口の植木のようである。
女性のお客様が、「夜香木(やこうぼく)」だと思うわよ、とおっしゃる。
次の日の昼間見てみると、花は閉じ、香りもしない。
そして夜が来て、また花は開き、強い香りを放ち始めた。
この夜は西風が吹いていたので、直接うちの店内には香りが流れて来ず、ほんのりと香る程度でなんともいえずいい気分になれた。
冷たい小雨が降り始め、客足も遠のき、なにせ、三連休の最後の日なので通りには人気もない。「咲笑」さんもお休み。雨の中、1本の枝を手折りに出ました。まぁ、小枝を1本くらいならいいですよね。
年金通りに咲く夜香木。
どちらかというと「場末」という雰囲気の年金通り、決して優雅な雰囲気の通りではないけれど、この夜はちょっと素敵な気分に浸れた。